週末田舎暮らしに憧れる三十路の専業主婦
九州の地方都市の賃貸マンションに住んでいるこむつまですが、最近は「もっと山間部に住んでみたいな」 なんて思っていることもあって、以下の本を読んでみました。
「平日は都会で働き、週末は千葉の里山で過ごす」という暮らし方を実践する馬場未織さんの体験談をまとめた著作、「週末は田舎暮らし-ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記-」です。
まず簡単なあらすじですが、東京生まれ、東京育ち、ごく普通の共働き家族が、「自然の中で子育てをしたい」という思いから南房総に土地を見つけ、平日都会、週末里山の往復生活を繰り返しながら、豊かな暮らしとは何かを見出し、NPO法人をつくって発信していくまでの奮闘記となっています。
著者の馬場未織さんは、写真を見る限り、とても綺麗なお姉さんで、「オシャレでスマートに週末田舎暮らしを楽しんでいるんだろうな」と思わせるような印象ですが、本書を読んでみますと、その予想は見事に裏切られます。
決して平坦ではなく、見通しの悪い道を、もがきながら進んで行った様子がリアルに伝わってきて、週末田舎暮らしには、確固たる信念が必要だということがよく分かります。
また、本書は、二地域居住の入門書でありながら、
・都市生活と里山暮らしの違いとは?
・人が幸せを感じる暮らし方とは?
・地域とどのように関わりながら生きるのか
・自然の中での子育てにはどういう意味があるのか
などについて、多くの示唆を与える内容になっているところも、同じ子育て世代としては良かったですね。
さて、二地域居住というと、一方は都会で慌しく働いていて、もう一方では田舎でのんびりと過ごす、というイメージがあるかと思います。
少なくともこむつまはそのように考えていました。
しかし、著者の場合はどちらも慌しく動いていました。
筆者にとっての二地域居住とは、「都会をオン、田舎をオフとする暮らし方」ではありません。
どちらか一方の居住地をメイン(オン)、もう一方をサブ(オフ)と考えるのではなく、どちらもメインの居住地であり、自由に行き来する生活なのです。
どちらか一方で働き、一方で休む・遊ぶのではなく、 全てミックスして、どちらに暮らしていても仕事をするし、遊ぶし、休むという生活です。
オンとオフの切り替えを曖昧にし、ゆったりと生きるためには、「こだわらないこと」が重要だと筆者は解きます。
何かにこだわる人ほど人間性の輪郭が見えやすかったり、それが毅然として魅力的に見えたりしますが、
「そもそもちっぽけな自分がさらにちっぽけな枠をつくってそこに厳密に生きるより、自分の核となるイデオロギー以外はほとんどぐずぐず、みたいな生き方でもいいんじゃないか」
といった融通無碍礼賛を掲げたくもなります。
確かに、自分の思うようにならない場面に出くわしたとき、こだわらないほうが人生を楽しめます。
逆にこだわると、苦しいだけです。
核さえしっかりしていれば、ぐずぐず、ゆるゆるでも大丈夫。
そして、人をこういう考え導いてくれるのが、田舎の良いところなのでしょう。
大地に接して暮らしていると、この「でっかく生きたい」という願望が強まります。
星空を眺めながら、地球に生きる人類の存在に思いを馳せるときと同じような。
そんな気持ちを傍らに持つことで、こまごまとした問題だらけの人生が、概ね幸せな人生に見えてくるから不思議です。
ではでは、See you later, alligator.