こむつまの日記

東京から熊本に移住したごく普通の専業主婦が思い出を消費するブログです。

秘密なんてどこにも書いてない「くまモンの秘密」という本

こむつまにとっても旦那にとっても縁もゆかりも無かった「熊本」という土地に移住してもうすぐ1年。

肥後弁にも慣れましたし、九州の甘い醤油にも適応しました。

 


先日、「くまモンの秘密-地方公務員集団が起こしたサプライズ-」という本を読みました。

くまモンの秘密 地方公務員集団が起こしたサプライズ (幻冬舎新書)

くまモンの秘密 地方公務員集団が起こしたサプライズ (幻冬舎新書)

 

 

東京に住んでいたときもその姿はことあるごとに目にしていましたが、熊本では「見ない日は無い」と言っていいほど日常生活に浸透している「くまモン」というキャラクター。

街を歩けば、それこそ3歩あるけば1匹の割合で、必ず目に飛び込んできます。

幼稚園でも「くまモン体操」なるものを園児に踊らせていますし。

 

 

いきなり結論から言いますと、本書の内容はいまひとつでした。

 

本書では、

くまモンが関西を中心にキャンペーン活動を始め次第に広く認知されるようになり、

熊本県営業本部長への就任、

数々の大手企業とタイアップした商品開発、

さらには、2011年ゆるキャラグランプリ第1位の獲得

など、押しも押されもせぬ人気者へと変化していく過程がドキュメンタリー風に書かれているのですが、全体に冗長で、くまモンのプロデュースに関する肝心なことは、意識的か無意識かは判断できませんが、ほとんど書かれておりません。

 


2009年4月、熊本県庁に「チームくまモン」と名付けられたPR部隊が誕生しました。
2年後の2011年春に九州新幹線が博多から鹿児島まで開通することを受けてのことでした。
新幹線開通は関西方面からの集客が期待できる一方、熊本が素通りされる危険性もはらんでおり、熊本の魅力を発信していくことが必要との趣旨で立ち上げられたわけです。

 

アドバイザーに就任した熊本出身の小山薫堂氏は、
「熊本の人たちの周りには自分たち自身がびっくりするほどいいものがたくさんある。それを再発見しよう」
「それを他県に宣伝するばかりでなく、まずは自分たちが楽しもう。そうすればよその人もいいものと思ってくれる」
と提言しました。

 

そしてこの考え方を「くまもとサプライズ」というコンセプトにし、デザイナー水野学氏の手を借りてロゴマークやキャラクターを作り上げ、8千万円の予算でPRを始めたのがくまモンのスタートだったのです。

 

くまモンは当初から「ゆるキャラ」ではなく「売るキャラ」、つまり熊本の産品や観光を売り込むためのキャラクターであることが明確に意識され、それに沿った活動を続けた結果、くまモン自体が今や熊本のブランドとなったのでした。
ですので、後発組の全国に魑魅魍魎と存在する「ゆるキャラ」とはそもそもの成り立ちが異なるわけです。

 

本書を読むと、小山薫堂氏が独自の哲学で、熊本県庁のチームくまモンに影響力を与え続けたことがよく分かります。

意地悪く言えば、県庁のチームくまモンは、小山氏のアイデアやプロモーション手法を実行しただとも言えます。

 

まあ、県庁職員ですからね。
なかなか奇抜なアイデアや効果的な宣伝手法を思いつくことはできないでしょう。
そのあたりをプロに任せ、自分たちは裏方に徹したのが良かったのでしょう。

 

くまモンの成功は、あくまでも小山氏を含めた「チームくまモン」のチームプレーであり、ミーティングを頻繁に開いて、各人がアイデアを自由にたくさん出し、その中で試行錯誤を繰り返していく手法をとったことが本書では強調されています。

 

また、県庁職員にとって幸運だったのは、くまモンの一連のキャンペーンに積極的に関わり、自らピエロを演じた蒲山郁夫知事の、「できないことをあえてやってみる」という一貫した姿勢が後押ししたこともあります。

トップのこうした姿が、職員を勇気付け、パフォーマンスを向上させるのです。

 


しかし、冒頭でも書いたように、本書の内容は「いまいち」なのです。

 

なぜか。

 

それは本書には「きれいごと」しか書いてないからです。

 

県庁職員のチームプレーの賜物です。

知事(トップ)の理解もありました。

色々苦労もあったけど、成功して良かったです。

要約するとこれだけなんですよね。

 

こむつまが知りたかったのは、「色々苦労もあった」の部分なんですよ。

ここが肝心だと思いませんか?

 

たとえば県議会には抵抗勢力はいなかったのか?
県民からの厳しい声はなかったのか?
それをどうコントロールしたのか?
小山氏のトップダウン的な手法が軋轢を生まなかったのか?
「チーム」とはいっても核になるキーパーソンはいたはずで、それは誰なのか?
「チーム」内、県庁内にはついていけない(ついてこない)職員はいなかったのか?
そのような人たちはどのように切り捨てていったのか?

 

こういう内部のドロドロが知りたかったのに。
絶対にあったと思うんですよ。

 

そして、こういう苦労から学べることに本当の価値があるのではと、こむつまは考えているものですから。

 

くまモンのように追随者が誰も真似できないほど圧倒的な差がついていれば、いくらマニュアルを公開しても平気だと思うんですけどね~。

 

ではでは、See you later, alligator.

旦那の禁酒継続期間:39日