クラウドファンディング化するふるさと納税。返礼品アピールからの転換は見られるのか
何日か前の日経新聞に「ふるさと納税を考える」というコラムが掲載されていました。
内容としては、昨今加熱する「ふるさと納税」について、「返礼品の効果が大きい」とした上で、疑問の投げかけを行うものでした。
以下、概要です。
- ふるさと納税では上限はあるものの、寄付額から2,000円を差し引いた額が住んでいる自治体の住民税などから控除されるわけだが、要するに、原資の多くが他の自治体の税金である。
- これといった特産品が少ない群馬県太田市では、市へのふるさと納税は数えるほどであり、一方で、太田市民が他の自治体へ寄付する額は年々増加している。
- 太田市は、他の自治体ではなく自市への寄付を促そうと、一定額以上太田市に寄付した太田市民に、北海道稚内市など交流のある自治体の特産品を送ることにした。
- 「税金の流れに歯止めをかける」というが、返礼品に返礼品で対抗するのも違和感がある。
- 2016年度からは企業版のふるさと納税が導入される。各地の自治体では、やはり企業向けの「返礼品」合戦が激しくなるのだろうか。
上記の最後の部分は勘違いもあるようなので一部補足しましょう。
現在政府が検討している企業版ふるさと納税は、「地方創生」をさらに進めるためのツールです。
企業版ふるさと納税は、地方公共団体が行う地方創生プロジェクトに対して企業が寄附を行った場合に、その企業に対して、税負担軽減を概ね2倍にするという税制上の優遇措置を講じるもののようです。
現行でも企業が行う寄附金の損金算入措置はあるようなのですが(寄附額の約3割)、それに加えて、法人事業税・法人住民税及び法人税からそれぞれ10%。20%の税額控除を行うことを検討している模様。
ですので、企業版ふるさと納税については、コラムの結びにあるような自治体の「返礼品合戦」にはならないわけです。
さて、話を市民が行うふるさと納税に戻しましょう。
日経新聞でも疑問を投げかけられていた返礼品合戦ですが、最近では多少方針転換も見られているようです。
2014年度には住民税を超える約14億6,300万円が集まり、ふるさと納税の寄付額日本一を達成しています。
全国に発送する返礼品を扱うようになったのを機に、市内の業者がパッケージデザインを一新したり、雇用を増やしたりといった好影響も出ているようです。
しかし一方で、
「納税する人が寄付者でなく、返礼品欲しさに寄付する消費者になってきている」
という事実もあり、
「好きな自治体への応援を広げる」というふるさと納税制度の原点は霞んでしまっているのも実情です。
そこで平戸市は、2015年度から返礼品のPRを抑制し、ふるさと納税による寄付金で実現した事業を、インターネットを通じて積極に広報し始めたそうです。
市は寄付金を、中学生までの医療費無償化や図書購入費の増額といった子育て環境の充実などに充てているのですが、住民に取材、感謝の言葉を集めた動画を製作し、それをユーチューブで公開しています。
返礼品より使い道に特化したPR活動を前面に出すことで、寄付は伸び悩んでいるものの、本当の意味で応援してくれる方を増やすという転換が図られたわけです。
また、返礼品を贈らずに事業で勝負している自治体も出てきています。
長崎県対馬市は、今年1月から「ふるさと納税制度『原点回帰』プロジェクト」と名付け、実現しようとする事業に純粋に賛同してくれる寄付を集める取り組みを始めたようです。
寄付されたお金の使い道として、島内で飼育される対州馬の放牧場拡充やPRを行う「日本在来馬を増やしたい」事業のほか、2020年開館予定の博物館で対馬の歴史や自然を学べるミュージアムキットを販売する「国境の歴史を伝えたい」プロジェクトなどを提示し、賛同者からの寄付を募るという仕組みです。
市の財政も厳しいでしょうから、やりたくても予算が足りなくて出来ない事業が全国からの寄付でできるようになるわけです。
通常の一般財源を活用した事業に比べて事業の意義が高まりますよね。
手が抜けないというか。
寄付された方の思いを背負って、市職員が事業に当たるわけですから。
今後はこういった流れが主流化してくるのでしょうか?
それとも引き続き返礼品アピール合戦が続くのでしょうか?
まだまだ後者のような気がしますね。
ではでは、See you later, alligator.
旦那の禁酒継続期間:24日