分子くん
齋藤勝裕氏著「分子のはたらきがわかる10話」を読みました。
最近愛読している、岩波ジュニア新書。
中高生向けに分かりやすく丁寧に書かれているので、こむつまのように頭の固くなった熟女でも、気軽に手に取ることができる一冊。
なんとなく、「久しぶりに化学の勉強でもしようかしら」という気持ちになったので、読んだ次第です。
物質はすべて分子でできています。
物質が機能し、はたらくことができるのは、分子が機能してはたらいているからなのです。本も鉛筆もケータイもテレビも、生き物の体もすべて分子でできている。
色がついたり、光ったり、動いたりするのも、すべて分子のはたらきだ。では、バラの花とネオンサインの赤は同じなのだろうか?
ディスプレイの液晶と有機ELとはどう違うのか?身のまわりの物とその変化が、分子の目を通すとよくわかる。
多様な分子のはたらきの中から、身近で興味深そうなもの10種類を選んで紹介。
どうです?
おもしろそうでしょ?
たまにこういう本を読むと、頭の普段使用しない部分が活性化されるような感じがして、スッキリします。
以下、本書の中でこむつまが「勉強になるな~」と思って、ページの耳を思わず折った部分を紹介します。
(原子炉の話)
燃料棒のあいだに制御棒がさしこまれています。制御棒を深く入れれば多くの中性子が吸収され、原子炉は停止します。反対に抜きだせば中性子数が増え、原子炉の動きは活発になります。
原子炉のまわりは減速材の水でかこまれています。この水は減速材であると同時に、冷却材(熱媒体)です。すなわち、原子炉の熱によって高温となり、その熱で発電機を回転させるのです。ただし、原子炉の中を循環する水(一次冷却水)は放射能によって汚染されています。そのため、熱交換器によって別の循環水(二次冷却水)に熱をわたし、この二次冷却水で発電機をまわすのです。そして、原子炉の心臓部(燃料棒、制御棒、一次冷却水)は放射線で汚染されているので格納気に収め、厳密に管理することにします。
以上が原子炉の原理です。原子力発電は火力発電と異なり、二酸化炭素を発生せず、ある意味で環境にやさしいといえるかもしれません。しかし、もし事故がおこると環境に回復不可能な傷を負わせる可能性があります。慎重に謙虚に取り組むべきエネルギーといえるでしょう。
(サリドマイドの話)
このように光学異性体は、化学的性質は同じですが、生体に対する性質はまったく異なります。それが恐ろしい形であらわれたのがサリドマイドです。
1956年、西ドイツでサリドマイドという薬剤が開発されました。サリドマイドはすぐれた催眠性があるため、睡眠薬として売り出され、多くの人が利用しました。
ところが、1962年ころ、不幸な赤ちゃんがあいついで誕生しました。一般にアザラシ肢症といわれる症状で、手足が不完全な赤ちゃんでした。調査の結果、原因はサリドマイドであることが判明したのです。
(フリーズドライの話)
昇華を利用した日用品に、フリーズドライ製品があります。コーヒーを冷凍して個体とし、これを真空下におくのです。すると水だけが昇華してなくなり、コーヒーの味や香りの成分は個体となって残るのです。これがインスタントコーヒーです。
インスタントラーメンについている具の多くもフリーズドライ製品です。水分を除くには加熱してもいいのですが、加熱すると香り成分はなくなり、食品は煮えすぎてグチャグチャになってしまいます。フリーズドライなら余分な熱をかけることもなく、しかも製品は多孔質となるので、後にお湯をかけてもどすときにも、速くもどるというわけです。
余談ですが、本書を読んでいて、こむつまはふと、10年以上前のことを思い出しました。
それは、高校生の時、駿台横浜校の夏季講習で受講した、化学の石川正明先生のことです。
石川先生は、化学をこよなく愛するがゆえに、電子を「電子くん」と呼び、化学現象を擬人化された元素たちがミクロな世界で引き起こす愉快なストーリー仕立てで解説されていました。
その石川先生に、本書の著者である齋藤勝裕氏が重なったわけです。
化学を愛するこの二人の先生には、ご接点があるのでしょうか・・・
ではでは、See you later, alligator.