カエルの楽園
熊本は余震が続いています。
なかなか部屋の片づけが捗りません。
水道もガスも復旧していないため、不便な生活も継続中です。
昨日、息子が、「なんで地震って揺れるの?地面の中で怪獣が暴れてるの?」と言っているのを聞いて、村上春樹氏の短編、「かえるくん、東京を救う」を思い出しました。
この短編では、「みみずくん」が巨大地震を引き起こそうとするんですよね。
大好きな作品です。
さて、今日は、「かえる」つながりで、地震の前に読んだ本、百田尚樹氏著「カエルの楽園」の感想などを書きたいと思います。
タイトルだけ見ると、正直あまりソソられませんよねえ。
中身はですね、面白かったです。
そして、それ以上に、筆者の悪意と憎悪の満ち方がすごかったです。
以下、あらすじです。
☆☆☆
突如現れた凶悪なダルマガエルに国を荒らされ、安住の地を求めて60匹のアマガエルが国を捨てて旅に出るところから物語は始まります。
しかし、安住の地はすぐには見つからず、旅は過酷なものになります。
長旅の過程ではヘビやイワナやイタチなどの天敵に襲われ、次々とアマガエルの集団の数は減っていきます。
途中住みごこちの良さそうな沼や池を見つけても、そこはすでに体の大きいアカガエルやトノサマガエルに占拠されており、彼らは同じカエルでありながら体の小さなアマガエルを助けるどころか食用にしてしまいます。
残ったわずか二匹のアマガエル、「ソクラテス」と「ロベルト」も、ウシガエルに襲われてもはや万事休すか、と諦めかけたところ、やっとの思いで辿り着いたのが、ツチガエルの国「ナパージュ」でした。
「ナパージュ」は平和で争いもなく、外から来たアマガエルにも優しく、豊かでまさしく二匹が求めた「平和の楽園」のように思えました。
なぜこんなにもナパージュは平和なのか、不思議に思った二匹のヒキガエルはその秘訣を母国に伝えようとナパージュについて調べ始めます。
するとナパージュには、
「1.カエルを信じろ 2.カエルと争うな 3.争うための力を持つな」
という国民が共有する「三戒」の教えがあることを知ります。
ナパージュのツチガエルは口々に「三戒があるから争いは起きようがない。だからナパージュは平和なんだ。」と説明します。
ロベルトは素直にこの「三戒」の素晴らしさに感銘を受けて、それを説く進歩的なカエルである「デイブレイク」に心酔してしまいます。
デイブレイクは日夜集会を開き、その集会では『謝まりソング』が合唱されていましたが、その風景にどうにも納得がいかないソクラテスは「三戒の教え」ができあがった背景を調べていくことにします。
するとそこには複雑な事情が絡んでいることを知るのです。
ナパージュ周辺を警備する老いた鷲「スチームボード」や、周辺のウシガエルも恐れる強力なツチガエル「ハンニバル」の存在です。
三戒の矛盾点について疑問がつのってきたソクラテスですが、その疑問をデイブレイクぶつけると、
「三戒によってナパージュは守られてるんだ。それを疑ってはいけない。」
と、デイブレイクは非論理的な回答しかしません。
ますます三戒に疑問を覚えるようになっていたソクラテス。
そんなある日、南の崖からウシガエルがナパージュに侵入してきます。
そして、国は大混乱に陥り・・・
☆☆☆
本書の登場人物を整理すると、
- ナパージュ=日本(ナパージュはJapanの逆さ読み)
- ツチガエル=日本人
- 「三戒」=憲法9条
- 凶悪なウシガエル=中国
- スチームボード=アメリカ
- デイブレイク=朝日新聞
と、なります。
本書で筆者が終始強調するのは、日本人ガエルたちが信念とする平和主義の「愚かさ」なわけですが、本書が良くも悪くも評判になっていることを鑑みますと、
「この作品が何を風刺しているか」
ということを理解できる日本人が少なからずいるということで、本書を読んでも何を皮肉っているのかすら分からない状態よりかは良いことなんだろうなと思いました。
本書の結末はあえてここでは書きませんが、風刺があまりに効きすぎて怖いくらいです。
この恐ろしい結末が気になる方は、是非本書を手にとってください。
ではでは、See you later, alligator.