こむつまの日記

東京から熊本に移住したごく普通の専業主婦が思い出を消費するブログです。

地方創生を全否定する本

増田悦佐(ますだ えつすけ)氏著「高度経済成長は復活できる」という本を読みました。

高度経済成長は復活できる (文春新書)

高度経済成長は復活できる (文春新書)

 

 

筆者は、日本の証券アナリストであり評論家。

ニューヨーク州立大学助教授、HSBC証券シニア・アナリスト、JPモルガンシニア・アナリスト等を経て、ジパングシニア・アナリストとのこと。

 

筆者の主張は非常に明快です。

 

経済は投資効率に従って、ある意味で力学的な必然によって動くので、投資は最も利益の出る産業やインフラに投入すべきである。

また、労働力は最も賃金が高く、雇用が不足している場所に集まるものである。

 

太平洋戦争の敗戦で焦土と化した日本は、このようにカネとモノが、大都市部、つまり東京ですが、に集中して投資されたことが、奇跡といわれた日本経済の高度成長の原因だったといえます。

 

このような集中投資は、決して当時の自民党政権や官僚による産業政策がうまくいったからではなく、農業から工業へ産業構造が変化する中で、農村で余った多くの若い労働力が都会へ移り住み、生産性の高い工業に従事したことによるものです。

 

結果、労働者の給料が増えて消費も増加し、生産現場では増産の必要が生じ、ますます農村から都会へヒトが移った、という成長の循環が生み出されたわけです。

 


さて、こうした経済成長の循環を断ち切ったのが、田中角栄による「列島改造論」であると筆者は主張します。


カネもヒトも、会社も、大学も、病院も、便利で近代的な生活も、大都会ばかりに集中していることが都会の過密と田舎の過疎の原因であって、人為的にカネ、ヒトを田舎へ分散させ、地域格差を是正することによって国土の均等ある発展が図れる、というのが「列島改造論」の趣旨です。

 

道路特別会計を活用し、全国各地にトンネルを掘り、橋を架け、道路を造りました。

また、農村対策として、米を農家から政府が高く買いつけました(消費者への売値は安く設定したため、政府の食管会計は大赤字になり、農家は米を増産した結果、米が余るようになるわけですが・・・)。

投資が全国に分散したため、本来であれば生産効率が高いはずの東京のパフォーマンスが低下し、かといって各地の田舎に作られた巨大港湾や高速道路、飛行場、工業団地などは閑古鳥が鳴いて生産性の向上には寄与せず、結果的に日本の経済成長は昭和50年頃から低迷を始め、高度成長は終焉しました。

 

ここからが本書のミソになります。

 

「高度経済成長は復活できる」とタイトルで謳っているわけです。
どうすれば日本はふたたび経済成長できるのでしょうか?

 

著者の見解は非常にシンプル。

 

投資を東京に集中し、都会で働きたい人はどんどん都会に出て行けるよう、価値観も制度も転換すれば良いのだ、というものです。

投資効率の悪い田舎や、衰退産業へのバラまきを一切やめて、皆が都会に集まって住めば良いというのです。

筆者の着眼点はあくまでも「経済成長の復活」ですので、田舎には田舎の伝統や文化がある、という視点はあえて無視されています。

 

現在進行形で政府が推し進めている(バラまいている)「地方創生」、「東京一極集中の是正」とは間逆の発想ですね。

 

「弱者(田舎)を切り捨てるとはけしからん!」と、著者を批判することは簡単ですが、日本の停滞がこれだけ長引く中、対策の一案として考えてみる必要が出てくるかもしれません。

今のように国が借金をして地方に財源を配り続けることはそう長く続きそうにありませんしね。

理念や理想はともかく、全国均一の住民サービスとか、支払った分以上の年金をもらいたいとか、そういったことを今後も継続していくことは、結局、将来の子や孫を借金まみれにするだけなのですから。

 

 

ではでは、See you later, alligator.

旦那の禁酒継続期間:43日