ゆる田舎暮らしがちょうどいい
「田舎暮らしに殺されない法」という本を読みました。
著者の丸山健二さんは芥川賞作家で、長野県は信州安曇野で生活しながら創作活動を続けておられる方です。
世にある多くの田舎暮らしの本は、「田舎は素晴らしい。田舎に住んで人間らしい生活を送ろう」的な、田舎暮らしを肯定的に捉える内容が多いかと思います。
自然豊かで、近所の人は優しく、人間らしい付き合いがある。
水と空気は美しく、早寝早起き、子供たちものびのび育つ。
満員電車のストレスなどとも縁は無く、素晴らしい生活が待っている。
しかし本書は違います。
そもそもタイトルの「殺されない法」が全く穏やかではありません。
本書は、都会でのサラリーマン生活を定年退職した人が、田舎暮らしへの漠然とした憧れや、都会の煩わしい人間関係から逃れたいというような安易な動機で、田舎にU・I・Jターンすると、とんでもないことになるよ、あなたの残りの人生が破滅するよ、という警告の書ともいうべき内容となっています。
田舎暮らしのためのノウハウは何も記されておらず、むじろ、
- あなたはなぜ便利な都会での生活を捨てて、田舎で暮らしたいと考えるのか
- それは何かからの逃避ではないのか、絵空事ではないのか
- そもそもあなたという人間は、そんなふうに何かから逃げて逃げて逃げまくって、企業や組織に潜り込んで半生を送ってきた人間ではないのか
と、厳しく、真正面から問いかけられているような内容です。
筆者は自身の実体験も含めて、田舎とは恐ろしいほど保守的で、利己的で、排他的で、どろどろした地縁血縁にまみれた、都会とは全く違う「別の日本」であると定義します。
- 田舎のコミュニティは運命共同体であって、プライバシーはなく、異端は排除される。
- しかも、連帯感と当時に、強烈な足の引っ張り合いも同居している。
- 人間関係以外にも、自然条件や地理的条件が厳しく、買い物するにも、通院するにも、大変に不便であり、ひとたび悪天候となれば行政による支援などはまったく当てにできず、自分の家や田畑は自分で守るしかない、自己責任が完徹される世界である。
- 「第二の人生で農業に挑戦する」などという発想は、農業というものが自分がいくら頑張っても、天候不順や病害虫のためにいともたやすく努力が水の泡になってしまうハイリスクな職業であることを知らないからこそできるのであって、農業はそんな素人考えが通用するような甘い世界ではない。
- タフさと知恵がなければ、生活の質は都会に比べて急減する。
このように、次から次へと筆者からの警告が続きます。
ちなみに、筆者からのこれらの問いに対する確たる答えは用意されておりません。
投げっぱなしジャーマンです。
神取忍さんじゃありませんが、本書を読んで心が折れてしまうような人は、憧れの田舎暮らしは再考するしかありません。
さて、こむつまはと言えば、熊本という東京から見れば「田舎」に住んでいるわけですが、一応政令指定都市ということもあり、都会の便利さはある程度確保した上で、田舎ののんびりした生活も楽しめております。
俗にいう「ゆる田舎暮らし」です。
本当に「ちょうどいい」と感じますね。
面倒なご近所づきあいもありませんし。
視線を少しだけ上に向ければ、青々と萌える山々が見える、この生活に感謝です。
ではでは、See you later, alligator.
旦那の禁酒継続期間:16日