下町ロケットは幻想か?日本型モノづくりの敗北
最近流行の下町ロケットに代表されるように、「日本の製造業は技術力がある」という認識を抱かれている方が多いかと思います。
「小さな町工場なんだけれど、世界的な技術を有している。しかし、経営力が低いために収益が確保できない」みたいなストーリー。
半導体やテレビといった分野の話ではありますが、湯之上隆氏著「日本型モノづくりの敗北」によれば、このようなお話は残念ながらまったくの神話だということになります。
日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ (文春新書 942)
- 作者: 湯之上隆
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/10/18
- メディア: 新書
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本書は、「日本企業は経営力が低い上に、さらに技術力も決して高いわけでは無い」という衝撃的事実をつき付けて来ます。
そして、この事実を認めない限り、我が国の製造業の復権はないと言い切ります。
著書は半導体技術者として昭和62年に日立に入社し、その後、不振のDRAM事業を立て直すために国策として主導された、日立とNECの合弁会社エルピーダメモリに出向します。
また、日本の半導体産業復権を旗印とした半導体先端テクノロジーズへも出向した経験を持つ、いわば日本半導体産業の盛衰を現場で実地に体験してきたエンジニアです。
そんな筆者が、「日本企業には技術力がない」と言うのですから、ここには非常に深い意味があるわけです。
これはわずか10年ほどで、あっという間に韓国にキャッチアップされ、シェアで追い抜かれてしまいました。
そして、新製品の開発や生産工程の効率化に対し、日本政府が巨額の研究費を投入したにもかかわらず、結局、挽回することはできませんでした。
なぜか。
その理由は複数あるのですが、筆者は最も大きなものとして、「半導体メーカーに安く作る技術がなかった」ことを挙げています。
当時の日本の半導体メーカーの性能は、非現実的なまでに高度なスペックではあったものの、半導体メーカーはそのために莫大な製造コストと検査コストをかける必要がありました。
このような高コストの製品は、一部のハードウエア企業への販売以外に販路がなく、さらに世界のコンピュータの主流が、大型の専用機から小型のパソコンに移ってくると、日本の半導体は明らかに高性能・高価格過ぎてまったく売れなくなってしまいました。
こうした高性能・高価格路線から低価格・大量供給路線への市場の変化を見逃した致命的なミスは、液晶テレビなどの家電分野でも同様に起こりました。
高い技術力を頼みに、数ミリ単位の「薄さの競争」や、視覚分解能を超えた「高画質競争」に明け暮れている間に、世界市場での競争の軸は「価格」に移ってしまいます。
海外の新興国市場では、韓国メーカーが社員を現地に駐在させ、適格なマーケティングを実施し、現地ならではのニーズをテレビに付加することで、さらにシェアを伸ばしていきます。
現地のニーズを無視した、「薄くて高画質だから高価でも売れるはず」という日本メーカーの思い込みは無残に散ってしまったわけです。
では、どうすればいいのか。
売れないものを思い込みで作っても意味はありませんので、まずは、大前提として、マーケティングによる市場の開拓や消費者ニーズの発掘が必要となります。
そして、その上で、重要なのは「イノベーション」であると筆者は説きます。
ポイントは、筆者の説くイノベーションが、技術がどうこうしたというような力ではないということです。
イノベーションとは爆発的に普及した新製品そのものなのです。
普及していないものは、どんなに高い性能を有していようと、そしてメーカーがどんな言い訳をしたところで、イノベーティブではないのです。
本書の最後で筆者はこう説明します。
イノベーションを起こす最も有望な手法は、「模倣」だと。
他者製品が自社のものよりも有能であること認め、変わろうとする意志が大切なのでしょう。
敬意を持って他社から学び、決して表面的な模倣に留まることなく。コンテクストを徹底的に分析して取り入れることができれば、イノベーションは起こるのです。
翻ってみますと、子供の頃から続けてきた勉強・学習、技術の習得というものが、「先人から学ぶ」というプロセスとなんら変わりはありません。
表面的な形だけの真似で利益を挙げようとする人間がいるため、「模倣」という言葉自体にあまり良いイメージがない気もしますが、そのような世間の風潮に囚われてはいけないのでしょうね。
「模倣」に関しては、本書も参考になるかと思います。
- 作者: オーデッドシェンカー,Oded Shenkar,井上達彦,遠藤真美
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2013/02
- メディア: 単行本
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こむつまも、創造的模倣をもって日常に価値を生み出す方向に努力したいと思います。
だいぶ議論が反れましたね。
ではでは、See you later, alligator.