こむつまの日記

東京から熊本に移住したごく普通の専業主婦が思い出を消費するブログです。

幸福というのは、わきたつ感情が心の中に落ちつき場所を見つけること

こんにちは。

昨日の予告通り、「クロ―ディアの秘密」について書きましょう。

 

でもその前に、見てくださいよこれ。

 

じゃーん!

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パッチワークでカーテンを作りました。

 

ステンドグラスみたいで綺麗じゃありません?

 

材料はこれ。

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旦那のいらなくなったワイシャツです。

 

ワイシャツ4枚から材料を切りだして、せっせと縫いました。

 

 

では、本題へ。

クローディアの秘密 (岩波少年文庫 (050))

クローディアの秘密 (岩波少年文庫 (050))

 

 

ニューヨーク州グリニッチに住む主人公の少女、クローディア・キンケイドは4人姉弟の長女であることを理由に、家の中で様々な割りを食っている現状に嫌気が差していました。

 

お小遣いが少ないことや、家事をしなければならないことなど、理由は色々ありましたが、「ただのオール5の優等生でいるのが嫌になった」というのもあって、いっその事家を飛び出してしまおうと考えたのです。

 

クローディアは家出を決行するにあたり、パートナーを選ぶことにしました。

 

パートナーに選ばれたのは、下から2番目の弟、ジェイミー・キンケイド。

選んだ理由は、ジェイミーがやたら金持ちだったから。

 

クローディアは色々金策しても4ドル18セントしか準備できませんでしたが、ジェイミーはその約6倍の24ドル43セントも持っていたので、家出にはうってつけの環境を有していたからです。

 

クローディアの慎重な計画、ジェイミーの財務大臣の手腕。

この二つをもって、この姉弟はメトロポリタン美術館に家出をしに行ったのでした(ただあるところから逃げ出すのではなく、逃げ込みたかったからです)。

 

クローディアはヴァイオリンケースに、ジェイミーはトランペットケースに衣服をたくさん詰め込んで出発します。

 

メトロポリタン美術館を選んだのは、大きくて、気持ちがよくて、屋内で、その上、美しい場所だったからです。

 

そして人で「ごちゃごちゃ」なので、かえって誰何される心配もありません。

 

午後五時半を回ると、メトロポリタン美術館は二人だけのものになります──少なくとも、二人にはそれは間違いない実感でした。

 

夜になると、がらんとした世界を楽しみ、クローディアはマリー・アントワネットになり、屋内にある「願いの噴水」で二人、水浴びをします。

 

あやうく見つかりそうになったことも何度かありました。

 

 

クローディアにとって、今回の家出の目的は「前の自分と違っている」ことでした。

 

それは、冒険のためでも、ヒロインになるためでもなく、「以前は持っていなかった秘密を持ち帰る」ということでした。

 

クローディアはなぜ家出が楽しかったのかを悟ります。

 

それは、計画することも、美術館に隠れることも、「秘密」だったからです。

 

単なる家出だけでは、終わりがあります。

 

クローディアは、いわば「終わりのない秘密」を持って帰りたかったのです。


そのようなクローディアの心を惹きつけたのが、美術館の「天使の像」でした。

 

実に神々しい佇まいをしているその像を見たクローディアは、すっかり像に夢中になってしまいました。

 

「美術館には優雅で洗練されているものばかりなのに、何故あの像がよりもの凄く重要なものに見えたのかしら?」と、自分でも不思議に思ったクローディアは、この天使の像のことを調べ上げてみようと考えました。

 

そこまでクローディアが執心するこの天使の像ですが、新聞によると、

「この像見たさに約10万人が訪れたが、その像というのがイタリア・ルネサンスの巨匠、ミケランジェロの初期の作品かもしれないと言われている」
ということでした。


また、
「この像は美術館が競売で225ドルで買い入れたので、最大の掘り出し物かもしれない」
という驚くべきことも書かれていました。

 

同時代で同価値のダ・ヴィンチの作品が500万ドルだったことを考えると、225ドルなどまるで雀の涙にもならない話です。

 

一体あの像にはどんな魅力や秘密があるのか?

 

2人は像のことに焦点を絞って色々と勉強していくようになります。

 

クローディアはとくに、天使の像にとって自分が重要な人になりたいと思いました。

「自分でこの謎を解こう!そうすれば、像がおかえしに何か重要なことをしてくれるわ」と考えたのです。

 

そしてジェイミーを相棒にかけずり回り、ついに、天使の像の「元の持ち主」のことを突きとめます。

 

2人は美術館を出て、はるばるニューヨークからコネチカットにある屋敷を訪れます。

 

そして、天使の像の元の所有者だったフランクワイラー夫人は、この2人の珍客を迎え入れることになるのです。

 

しかし、「天使の像はミケランジェロの作かどうか」という子供たちの熱心な問いに、「それはわたしの秘密よ」と言って、フランクワイラー夫人は一向に答えてくれません。

 

一方のクローディアたちも負けてはいませんでした。

 

「この一週間、あんたたちはどこにいたの?」

 

「それはあたしたちの秘密です。」


ここではじめて、クローディアとフランクワイラー夫人は、お互いが「のっぴきならない秘密」を抱えていることを知り合います。

 

夫人は、クローディアが、美術館での冒険や興奮を自分の外にあふれ出させることなく、そっとしまい込める点で、彼女が「幸せである」ことを見てとります。

 

だからこそ、クローディアの秘密と、自分の秘密とを交換するという「商談」を最終的には成立させるのです。

 


「秘密というものは、それを持つだけで、その人を内側から支え、前とは違った人物に変える力を持っている」というのがこの作品のメッセージですが、素敵だと思いませんか?

 

「もしここにある綴じ込みがみんな秘密で、それに秘密ってものが人の内側をかえるもんだとすると、フランクワイラーおばさん、おばさんの心の中って、おそろしくごちゃごちゃ(mixed-up)で、みたこともないほどかわったもんだろうね。」

 

と、クライマックスのシーンで、ジェイミーは感嘆します。

 

何を隠そうこの「クローディアの秘密」、原題は「From the Mixed-up Files of Mrs. Basil E. Frankweiler」です。

 

直訳すると、「フランクワイラー夫人のごちゃごちゃの綴じ込み場所(ファイル)から」といったところでしょうか。

 

天使の像は、フランクワイラー夫人の秘密の "Mixed-up Files" に、羽根を休める場所を得たのでしょう。

 

わきたつ感情が落ち着き場所を得ること、それが幸福なのです。

 

ではでは、See you later, alligator.