こむつまの日記

東京から熊本に移住したごく普通の専業主婦が思い出を消費するブログです。

We do not inherit the earth from our ancestors; we borrow it from our children.

横森豊雄氏、長坂泰之氏、久場清弘氏著の「失敗に学ぶ中心市街地活性化-英国のコンパクトなまちづくりと日本の先進事例」を読みました。 

失敗に学ぶ中心市街地活性化―英国のコンパクトなまちづくりと日本の先進事例

失敗に学ぶ中心市街地活性化―英国のコンパクトなまちづくりと日本の先進事例

 

 

以前、木下斉氏、広瀬郁氏著の「まちづくりデッドライン – 生きる場所を守り抜くための教科書」を読み、地方都市の現状について興味を持ったため、引き続き学ぶべく、本書を手に取った次第。

 

以下、本書のイントロからの抜粋です。

 

中心市街地活性化という言葉は、多くの日本人にとっては目新しく、いわゆる「まちづくり三法」が制定された2000年頃から盛んに使われるようになったが、最近ようやく浸透してきた感がある。

しかし、市民に中心市街地はどこですかと聞くと、多くの人は駅前と答えたり、商店街と答えたりする。

したがって、中心市街地活性化はここを活性化することを意味するが、駅前は通勤・通学で通過するだけのところであり、また、多くの人は既に商店街を利用しなくなっているので、利用しない商店街の活性化を政策の優先課題とすることに疑問を感じている市民が多い。

そもそも、なぜ中心市街地を活性化しなければならないのかが、あまり理解されていない。

 

中心市街地を活性化しなければならない一番の理由は、それがコンパクトなまちづくりに貢献するからである。

わが国が直面する少子高齢化・人口減少、環境・資源問題、国・地方を問わない厳しい財政事情に適切に対応する方策がコンパクトなまちづくりであり、その実現を目指す有効な手段が中心市街地活性化である。

既に、わが国はかつての人口増の日本とは根本的に異なった社会に突入してきていて、今までのような拡散的なまちづくりからコンパクトなまちづくりへ転換しない限り、我々は後世に大きな負の遺産を残すことになる。

 

我々世代の使命は、次の言葉に集約されている。

「この土地は先祖から受け継いだものではない。子孫から借りているのだ」

ネイティブ・アメリカンの格言"We do not inherit the earth from our ancestors; we borrow it from our children.")

 

序章および第1章では、コンパクトなまちづくりの概念、それを目指す社会・経済的背景、そしてコンパクトなまちづくりが必要な理由を説明しています。

 

特に、地方都市で起こってきた金太郎飴の衰退モデルを提示し、旧まちづくり三法下で活性化が頓挫した理由をまとめています。

 

第2章では、日本が学ぶべき失敗と成功のモデルを示している英国の分析です。

 

郊外施設の厳しい規制と、官民のパートナーシップであるタウンセンターマネジメント(TCM)によって成し遂げた、成功プロセスをまとめています。

 

第3章はまちづくり三法の改正内容(本書の発行は2008年)と、国の支援制度の解説です。

 

第4章から第8章では、(2008年当時における)国内の先進的な取り組み事例の紹介です。 

  • 2核1モールのまちづくりとタウンマネージャーの存在で成功した長野県長野市
  • 市役所と商店街の連携プレーおよび車社会に対応したまちづくりに取り組んでいる宮崎県日向市
  • 一貫した政策で民間投資の呼び込みに成功した青森市
  • 超大型店の郊外出店を契機として街が結束した宮崎市
  • マーケティングを活用してまちのイメージアップに成功した千葉県柏市

が取り上げられています。

 

 

こむつまが本書を読もうと思った最大の理由は、「失敗に学ぶ」というタイトルに惹かれたからです。

 

しかし、「日本国内のダメダメな失敗事例集」を期待していたものの、本書も結局は、その大半を先進事例の紹介に割いていました。

 

先進事例集なんて、世の中には山ほどあるんですよね。

 

もっと我が国の地方都市の悲惨な現状を、危機感を煽るような形で紹介するような本があっても良いと思うのですけど・・・

 

 

それと、何を隠そうこむつまは、2010年4月から2011年3月までの1年間、長野市に住んでいたのですが、あの旧ダイエー長野店の跡地を活用した「もんぜんぷら座」が、優良な事例として紹介されていることにも違和感を持ちました。

 

平日も土日も人気が無く閑散としていましたからねえ・・・

 

 

とはいえ、日本創成会議の報告(通称、増田レポート)において、2060年には我が国の人口が8,600万人にまで減ると予想され、是非はともかく、政府も、地方都市を「地方の人口流出に対するダム」と位置づけ、「地方の活力の回復と社会の若返りを図る」という戦略を立てている以上、地方都市の中心市街地活性化は非常に重要な政策課題であり、本書がまちづくりに携わる人々にとって有用なテキストであることは間違いないと思います。

 

以上、熊本在住専業主婦の読書感想文でした。

 

ではでは、See you later, alligator.