子供にステロイドを塗る日々
かなりドキッとするタイトルでしょうか。
こむつま家の2人の子供たちは、ともにアトピー性皮膚炎を患っています。
毎月皮膚科に通院し、薬(ステロイドのほか、プロトピック軟膏や保湿のヒルロイドソフト軟膏)を処方してもらっています。
現在通院している皮膚科の治療方針は、
「基本的にはヒルロイドソフトでしっかり保湿し、軽度の部分にはプロトピックを、赤みがあり、カサカサしているところにはステロイドを」
というものです。
こむつまも旦那も、アトピー治療でのステロイド使用に抵抗はありません。
理由は、数年前、石川県の金沢市に住んでいた頃にお世話になった、金沢大学附属病院の竹原先生(皮膚科)の治療方針が、「適切なステロイド使用によるアトピー治療」だったからです。
旦那の仕事の関係で、こむつま家が金沢に住んでいたのは、2011年4月から2013年3月までの丸2年間。
上の子は金沢に引っ越す直前に生まれ、下の子は金沢生活2年目の秋に生まれました。
金沢生活1年目の夏の時点で、まだ生後8か月の長男は全身湿疹だらけで、夜ももぞもぞと体をかき、顔は真っ赤で、とにかく可哀想でした。
近所の小児科に連れて行っても、「乳児湿疹かなあ?」という診断。
保湿剤を処方されるものの、劇的な改善はありませんでした。
小児科ではなく、早目に皮膚科の専門家に見てもらった方が良いのかなと考え、結局、その小児科の先生に、アレルギーの専門家、皮膚科の専門家を紹介してもらうことにしました。
そして、紹介されたのが金大付属病院の竹原先生だったのです。
通うようになってから分かったのですが、竹原先生のもとには、石川県内だけでなく、全国から治療のために訪れるアトピー患者さんが大勢いらっしゃいました。
それぐらい人気のある先生だったのです。
竹原先生の指導の下、こむつまと旦那は、適切なステロイド使用に基づくアトピー治療を開始することになりました。
もちろん、竹原先生は、ステロイドの副作用もきちんと説明してくれました。
そう、竹原先生の治療の第1回は、ステロイド治療の誤解を解くための説明会(30分程度だったかな)から始まるのです。
治療を続けていくうちに、子供の症状はみるみる改善し、お肌ツルツルになりました。
上の子も、下の子も、今では、「この子たちアトピーなんです」とこちらから言わなければ、パッと見分からない状態をキープできています。
こむつまも旦那も、今でも竹原先生には本当に感謝しています。
さて、今日は最後に、そんな竹原先生が書かれた「アトピービジネス」という本を紹介したいと思います。
竹原先生が医師になりたてだった昭和40年代、アトピー性皮膚炎はポピュラーな病気で、皮膚を清潔にしてステロイド剤を正しく使えば良くなるものだったそうです。
(アトピー性皮膚炎はなかなか「完治」する病気ではないので、悪化しない状態でうまくコントロールできている状態、医学的には寛解(かんかい)という表現が正しいようですが。)
そのため、皮膚科医師の間では、アトピーを特別な病気だとする意識は全くなかったそうです。
しかし、昭和50年代になると、おもに小児科医師の間で、アトピー性皮膚炎とアレルギーの関係を重視する考え方が提唱されるようになりました。
従来の皮膚科による治療法はステロイド剤に過度に頼りすぎるもので、患者のアレルギー体質を直さない限り、アトピーは根本的に完治しないという考え方が急速に広がってきたわけです。
竹原先生のお考えでは、ステロイド剤は使用法さえ間違わなければ安全な薬であるものの、一部に副作用が起こることもあり、薬剤である以上それは仕方がない(あくまでリスクの問題)というもの。
また、「そもそもアトピーが完治することなどない」という、ある意味で現実的な見解を先生は示されているのですが、実際に苦しんでいる患者さんにとっては、
「ステロイドなどいくら塗っても無駄で、体質を変えることでしか完治しないと言われれば、ステロイド剤は拒否し、健康食品、健康水、温浴療法など様々な体質改善療法をしたほうが良い」
と考えるようになるのは自然な流れだと思います。
昭和60年代に入り、アトピーの問題がマスコミに喧伝され、国民にも広く知られてくるようになると、患者によるステロイドの誤用や一部の知識の少ない医師による間違った処方などもあって、「ステロイド剤でかえってアトピーの症状が悪化した!」という
「ステロイド イコール 悪」
「ステロイドを勧める医師 イコール 儲け主義で製薬会社の手先」
というようなキャンペーンが定着していったそうです。
竹原先生によるとこれは逆で、ステロイドを拒否して怪しげな民間療法に頼ったことで、かえって症状の悪化を招く患者が続発していたとのこと。
世界中で日本だけ、アトピーが難病扱いされ、医学的根拠が薄く迷信に近いような療法や健康食品のビジネスが闊歩し、大きな利益を収めている状況を、「アトピービジネス」と皮肉って、いい加減な記事を書き散らすマスコミの責任も含めて指弾しているこの本を、アトピーに苦しむお子さんを持つ、お父さん、お母さんにぜひ読んでいただきたいと思います。
ではでは、See you later, alligator.