こむつまの日記

東京から熊本に移住したごく普通の専業主婦が思い出を消費するブログです。

いま、きみを励ますことば

最近、岩波ジュニア新書にはまっています。

 

岩波新書のジュニア版として、中学生・高校生を主な読者対象としているわけですが、こむつまのようなおバカな大人にとっては、非常に丁寧に説明等が記述されているため、啓蒙書として読みやすいのです。

  

今日読んだのは、中村邦生著、「いま、きみを励ますことば 感情のレッスン」という本。 

 

 背表紙の内容紹介から。

 

だれかを好きになってドキドキしたり、友だちとケンカして悲しくなったり、人生のさまざまな局面で経験する感情の起伏や気持ちの変転。

 

古今東西の文学作品のことばの中から、多様な人間模様や感情のありようを紹介しながら、解説します。

 

生きることを深く見つめ直すきっかけとなるだけでなく、読書案内としても最適の一冊です。

 

本書の構成は、様々な文学作品の中から筆者が共鳴した文章・フレーズがまず引用され、それに対する筆者の考え等が2~3ページで説明されるというもの。

 

こむつまが「面白いな」、「引用元の原著を読んでみたいな」と思ったものについて、一部ご紹介します。

 

これらの空爆を通して、一つの顕著な事実は、日本人が都市爆撃につき、決して米国の無差別爆撃を恨んでも、憤ってもおらぬことである。

僕が「実に怪しからん」というと、「戦争ですから」というのだ。

戦争だから老若男女を爆撃しても仕方がないと考えている。

「戦争だから」という言葉を、僕は電車の中でも聞き、街頭でも聞いた。

 

清沢洌「暗黒日記」

  

清沢のこの言葉を受け、筆者は「人道的な憤怒を持つこと」の重要性を述べています。

 

絶大な被害を加えたり招いたりする、明らかな因果性を持つ、人が人に対してなす残虐行為は、「天災」などでは決してないと。

 

だから、地震や台風の被害と同様に、人が人に対してなす残虐行為を受けいれてはダメなのです。

 

諦めは寛容とは異なるということ。

 

寛容とは心の葛藤をへて獲得される精神的態度なのです。

 

筆者は、日本人の国際的な他者意識にも微妙に影響しているとも考察しています。

 

 

しつけの良さというのは、テーブルクロスにソースをこぼさないことではなく、誰かがこぼしても気にもとめないという点にある。

 

チェーホフ「手帖Ⅰ」(神西清池田健太郎原卓也訳)

 

いい教養というものは、ソースをテーブル・クロースにこぼさないことではなくして、だれか別の人がこぼしても、気づかないふうをしているところにある。

 

チェーホフの言葉」(佐藤清郎訳)

  

筆者は後段の訳のほうが一層深々とした味わいがあると述べています。

 

確かに、これも教養と考えたいですね。

 

 

こうしてテッラルバの毎日はすぎ、ぼくたちの感情はしだいに色褪せて、鈍くなっていった。

そして非人間的な悪徳と、同じくらいに非人間的な美徳とのあいだで、自分たちが引き裂かれてしまったことを、ぼくたちは思い知っていった。

 

イタロ・カルヴィーノ「まっぷたつの子爵」(河島英昭訳)

 

だれでも「善意」というものに対して異議を唱えにくいものです。

 

その「正しさ」の前では身動きがとれない。

 

これはなかなかやっかいな問題です。

 

非人間的な善行もあるということを心に留めたいと思いました。

 

 

「自分を大切にする」のも、むかしのように外部からの影響の侵入を遮断し、自己を絶対化することではなく、自己を形造る要素がすべて外界から来たものであることを知り、その組合せに個性をみとめ、そこに含まれた可能性を抽きだし、そのことによって、現実に何物かをつけ加える、少なくともそういう創造の方向に努力することになりましょう。

 

中村光夫「自分を生かす」

 

「自分を大切にしろ」とはよく聞くフレーズだが、具体的にどのようなことを示すのかはわかりません。

 

「自分を大切にするって、どういうこと?」という問いに対し、筆者は中村の言葉を借りて説明します。

 

「自己」とは外界からの影響によりできあがった「合成体」であり、そのような「自己」を「大切にする」とは、要素の新しい組合せによって、これまでなかった何かを創造することにほかならないのだと。

 

もちろん、単純に、外界に屈服することではありません。

 

すすんで外界とかかわり、それを変化させることで自分も変化していく。

 

ただし、「自分を大切にする」ことは、必ずしも「美徳」ではないし、不幸を避けるための「幸福の条件」でもありません。

 

あくまでも私たちの「生きる態度」なのです。

 

 

ではでは、See you later, alligator.

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