【感想】森博嗣著「本質を見通す100の講義」
「100の講義」シリーズ第4弾。
ショートエッセィのためサラッと読むことができるようで、思わず膝を打つような切り口の鋭い指摘に対し、少し立ち止まって考えたりなんかして。
いずれにせよ今回も楽しく読了。
こむつまは小説でも絵本でもビジネス書・自己啓発書でも歴史書でも何でも読むのですが、なんで自分が本を読むのかを少し考えてみました。
以前、九州のどこかの県知事が、
「学校でサインやコサインを教えて何になる。もっと実生活の役に立つことを教えた方が良いのでは?」
という趣旨の発言をされて批判を受けたようですがが、まあ、こむつまの趣味の読書なんかも確かにそうで、本に書いてある文章そのものが、その後の人生に役立つことというのはほとんどないわけです。
そうではなくて、本を読んでいるときに「自分で考えたこと」、「自分で気づいたこと」が、自分にとっての糧となり、その後の人生を少しだけ生き易くさせてくれると感じています。
誰かにとっては無意味なガラクタでも(知事にとっての三角関数のように)、そこに価値を見出す人もいるわけで、物事の価値というものは、その「もの」にあるのではなく、結局は、自分の中にあるのだなと気づきます。
「問題」も同じで、自分の外(周囲)に問題(原因)があるのではなく、自分の中にあったりするわけですよね。
だからこむつまは、本を読むときは「影響を受けよう」と思いながら読むし、そこに読書の価値を見出しているのですが、この感覚を、本書の「まえがき」において森先生が物凄くうまい表現で書かれていたので、引用させていただきます。
本というのは、窓から射し込む光のようなものであって、それで貴方の部屋が明るくなることもあれば、埃や汚れを際立たせることもある。でも、それは貴方の部屋なのだ。光が作ったものではないし、僕は、貴方の部屋を知らずに書いているのである。
あるときは、その光で貴方自身の影がくっきりと壁に映し出されるかもしれない。自分の姿のアウトラインは滅多に見られるものではないから、じっくりと観察して、楽しんでもらいたい。本を読む醍醐味は結局はそこにある。作者を知るために、太陽を見ても眩しいだけだ。それよりも、自分の部屋に目を向けた方がずっと有益だろう。
光は、ただすべてを照らす。少し色が着いていたり、多少の明暗の演出はあるかもしれないけれど、見えるのはあくまでも貴方の部屋であり、見るのは貴方の目だ。
とても優しく温かい文章だと思います。
ではでは、See you later, alligator.